アメリカ武士 2020 11 22

書名 沈みゆくアメリカ覇権
著者 中林 美恵子  小学館新書

「武士は食わねど高楊枝」
 武士というものは、貧しくて満足な食事ができなくても、
あたかも食事をしたかのように楊枝を使って見せるということです。
 江戸時代の後半になると、貨幣経済の発展によって、
裕福な商人が多くなる一方で、
武士たちは貨幣経済についていけなくて貧しくなりました。
しかし、武士たちは気品と清貧を選んだのです。
 2020年のアメリカ大統領選挙を見て、
私の感想は、「アメリカ人も武士だった」と思いました。
 トランプ大統領は、現職の大統領としては、
過去最高の得票を得ましたが、
バイデン氏は、それ以上の得票を獲得しました。
 多くのアメリカ国民が、トランプ大統領の言動にうんざりしたのでしょう。
SNSに投稿される言動は、暴言に近いものが多々ありました。
 多くのアメリカ人は、たとえ貧しくなっても、
アメリカのプライドを保ちたいと思ったのでしょう。
 さて、トランプ政権が発足する前の状況を振り返ってみましょう。
アメリカは、メキシコと自由貿易協定を結んでいましたので、
日本の自動車メーカーは、メキシコに工場を建設して、
メキシコからアメリカへ自動車を輸出するつもりでした。
 それに対抗するために、
アメリカの自動車メーカーも、国内の工場を閉鎖して、
メキシコに工場を建設しました。
 しかし、トランプ氏が大統領に当選すると、
「メキシコに工場を移転させるのは、けしからん。
アメリカに工場を戻せ。
アメリカに工場を建てろ」と主張したのです。
これは、日本の自動車メーカーには大きな圧力になりました。
 日本人からすれば、
「何の根拠があって、そんなことを言うのか」という思いでしたが、
日本はアメリカに安全保障を依存している以上、
トランプ大統領の要求を泣く泣く飲まざるを得なかったと思います。
 このようなトランプ大統領の言動は、
日本の自動車メーカーには不利になったかと思いますが、
アメリカの労働者にとっては有利になったでしょう。
 トランプ大統領の持論は、グローバリズムの否定とアメリカ第一主義です。
しかし、2020年の大統領選挙の結果は、得票数で、トランプ大統領は負けました。
つまり、「グローバリズムの否定とアメリカ第一主義」も負けました。
今度は、グローバリズムと国際協調の復活です。
 同盟国に国際協調を求める以上、
同盟国に自由貿易を保証しなければなりません。
 この結果、アメリカのグローバル企業は発展しますが、
アメリカの労働者は貧しくなるでしょう。

Flyover country 2018 10 6

「超一極集中社会アメリカの暴走」(小林由美)という本には、
このようなことが書いてあります。
 アメリカ国民は、富の集中や金権政治にうんざりしています。
労働者の味方だったはずの民主党が、
クリントン政権の頃から都市の進歩派富裕層を主要な資金源に取り込み、
彼らの利益を代表するようになりました。
 アメリカは、「Flyover country」(上空を飛ぶ国)になって、
つまり、権力者も資金も、東海岸と西海岸を飛行機で往復するだけで、
その空路の下にある大陸中央部は、完全に無視され、馬鹿にされている。
中西部や南部の労働者は、生活困窮の原因をそのように認識していました。
(引用、以上)























































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